2000年代初頭に文部科学省の調査が実施されて以降、「発達障害」という言葉は少しずつ身近になってきました。
中でも「注意欠陥多動性障害(ADHD)」は、保育園や小学校の現場でもよく話題にのぼる障害のひとつです。
この記事では、発達障害に関する知識があまりない方や、これから学びたいと考えている方を対象に、「ADHDの特徴」「家庭でできる接し方」「療育方法」について初心者向けにわかりやすく解説します。
ADHDとは?不注意や多動・衝動が目立つ発達障害
注意欠陥多動性障害(ADHD)は、「不注意」「多動性」「衝動性」が目立つ発達障害です。主に以下の3つのタイプに分かれます。
ADHDの主なタイプ
タイプ | 主な特徴 | 行動例 |
不注意有意型 | 忘れ物や集中力の欠如が目立つ | ・よくものを無くす ・集中力が続かない ・指示を聞いても途中で抜けやすい |
多動・衝動型 | 落ち着きのなさや突発的な行動が目立つ | ・授業中や静かな場面でもじっとしていられない ・順番を待つのが苦手 ・思いついたことをすぐに口に出してしまう |
混合型 | 不注意と多動・衝動の両方が強く出る | ・忘れ物や集中の問題と、落ち着きのなさが両方ある ・ルールを守るのが難しく、集団行動が苦手 ・感情の起伏が激しく、衝動的な行動が目立つ |
ADHDは何歳ごろに気づくの?
- 症状が現れ始めるのは2歳頃から
- 診断される平均年齢は、男子が8歳、女子が12歳とされている
ADHDの症状は保護者よりも、園や学校の先生など、複数の子どもを見る専門職が先に気づくケースが多いです。
気になる行動が続くときは、専門家からのアドバイスに耳を傾けてみましょう。
ADHDの原因は親の育て方ではない
ADHDは脳の働きに関係する「先天的な特性」とされています。
よく誤解されがちですが、育て方やしつけの問題ではありません。
ただし、親の関わり方や家庭環境によって症状が落ち着くこともあれば、逆に強まることもあるため、子どもに合った関わり方を探していくことが大切です 。
ADHDの子どもに見られる行動の特徴
不注意の行動例
- 忘れ物やなくし物が多い
- 周囲の物にぶつかる
- 宿題や提出物の期限が守れない
多動性の行動例
- 授業中に立ち歩く
- 手や足を動かし続ける
- 周囲の声に反応してしまう
衝動性の行動例
- 急に走ったり大声を出す
- 他人に手が出ることがある
- 思ったことをすぐ口にしてしまう
ADHDの主な療育・治療方法
ADHDの支援方法には、以下の3つがよく用いられています。
行動療法(例:ソーシャルスキルトレーニング)
- 良い行動を強化し、困った行動を減らす方法
- 望ましい行動を練習し、自己肯定感を高める
カウンセリング
- 感情や行動を整理し、どうすればうまくいくかを考える支援
- 子ども本人の「気づき」を大切にするアプローチ
薬物療法(医師の処方が必要)
- コンサータ(メチルフェニデート)
- ストラテラ(アトモキセチン)
- インチュニブ(グアンファシン)
- ビバンセ(リスデキサンフェタミン)
※服薬は医師と相談して決めましょう 。
ADHDの子どもと関わる時のポイント
1. 得意なこと・好きなことを一緒に見つける
「好きなことには集中できる」子は多いです。
得意を伸ばすことで自信がつき、情緒も安定しやすくなります。
2. 指示はなるべく具体的で簡単に
例:「机の上を片付けて」ではなく、
- 筆記用具は引き出しに入れてね
- 教科書は右の棚に並べてね
- 漫画は本棚にしまってね など
3. 視覚サポートも有効
実際に行動を見せたり、イラストや写真を使うと理解しやすくなります。
4. 伝える時は静かな場所で
周囲が騒がしいと集中しにくく、伝わりにくくなります。
静かな環境で、短く伝えることが大切です。
気になる行動があれば早めに相談を
「ちょっと気になるな」と思ったら、以下のような場所に相談してみましょう。
- 小児科
- 児童精神科・心療内科
- 発達障害者支援センター
- 地域の子育て支援窓口
通所支援を利用するには受給者証の申請が必要
児童発達支援や放課後等デイサービスなどの通所支援を利用するためには、行政に「受給者証」の申請を行う必要があります。
「受給者証の申請方法」「自己負担金の目安」「記載される情報」など、詳しくは別記事【受給者証の申請方法と記載内容】で解説しています。
まとめ
ADHDは「個性のひとつ」であり、困りごとはサポート次第で改善していくことができます。
大切なのは、「行動の背景にある気持ち」に寄り添うことです。
一人ひとりに合った関わり方を探していくことで、子ども自身が安心して生活できるようになります。
発達障害についての理解を深める第一歩として、この記事が参考になれば幸いです。
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